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給与計算における労働時間(主に残業時間について)
2021年10月30日 カテゴリー: コラム
給与計算において色々な意味で一番頭を悩ませるもの、残業代。
今日はこの残業代についてお話をしていきたいと思います。
現在は勤務形態が多様化しているため、残業代の計算も勤務形態に応じて様々な規則があります。
今回見ていくのは以下のような内容となります。
1.給与計算の基礎
2.変形労働時間制
・1か月単位の変形労働時間制
・1年単位の変形労働時間制
・1週間単位の変形労働時間制
・フレックスタイム制
3.みなし残業制
給与計算の基礎
①支給額: [基本給と残業代、各種手当など] -②控除項目:[ 社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税など] =③差引後支給額
基本的な計算式は、このようになっています。
①支給額は大きく分けて3つあります。
1.基本給、2.残業代、3.通勤手当などの各種手当
②控除項目は大きく分けて4つあります。
1.社会保険料、2.雇用保険料、3.所得税、4.住民税
支給額のうち「残業代」の部分について、通常の勤務形態の場合、残業代は次の計算式によって算定されます。
また割増率については、以下のようになっています。
*雇用契約や就業規則で上記より高い割増率が定められていた場合は、雇用契約や就業規則で定められている割増率になります。
変形労働時間制
繁忙日や繁忙期に合わせて1日の労働時間を変動させるなどして、労働時間を月や年単位で計算する制度です。この制度を「変形労働時間制」といいます。
現在以下の4種類が規定されています。
・1か月単位の変形労働時間制
・1年単位の変形労働時間制
・1週間単位の変形労働時間制
・フレックスタイム制
1か月単位の変形労働時間制
1か月の労働時間を平均して週の労働時間が40時間以内になるように
所定労働時間を設定できる制度で、特定の日に法定労働時間を超える所定労働時間を設定できます。
例えば所定労働時間が8時間勤務で毎月月末が繁忙期だった場合、「1日から24日までの就業時間は午前9時から午後5時まで(7時間)、25日から月末までの就業時間は午前8時から午後7時まで(10時間)とする」などといった契約で働く場合がこの制度に当てはまります。
1か月単位の変形労働時間制の残業代は以下のように計算されます。
①1日ごとの残業時間を算出⇨所定労働時間を超えて働いた部分
(ただし所定労働時間が8時間以内の場合は8時間を超えた部分)
②1週ごとの残業時間の算出⇨週の労働時間が40時間を超えた部分
(ただし①で残業となった時間を除く)
③変形労働時間ごとの残業時間の算出⇨法定労働時間の上限枠(※)を超えた部分(ただし①②で残業となった時間を除く)
(※法定労働時間の上限枠は、1週間の法定労働時間(40時間)×変形期間の暦日数÷7と定められています。)
1年単位の変形労働時間制
1か月を超え1年以内の一定期間を、平均して1週間の労働時間が40時間以内の範囲内において、特定の日または週において、1日8時間または1週40時間を超えて所定労働時間を定めることができる制度です。
例:デパート(御中元、御歳暮)
残業代の計算は、1か月単位の変形労働時間制と同様です。
1週間単位の変形労働時間制
週単位で所定労働時間を調整する制度です。
ただし、業種も規模も限定されている。
規模30人未満の厚生労働省令で定められた事業
(小売業、旅館、料理・飲食店の事業)
週全体で残業代を計算しますので、1日ごと、1週ごとの基準を超えた場合に残業代が発生します。
フレックスタイム制
1か月など(※)の単位期間の中で総所定労働時間を定め、その範囲内で労働者が始業や就業の時間を決めることができる制度です。
※3ヶ月以内の単位期間まで認められている→後述の清算期間
例えば予定があるから月曜日は3時間だけ、まとめて仕事をしたいから火曜日は10時間…というような働き方ができる制度です。
一般的なフレックスタイム制は、1日の労働時間を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)、その時間帯の中であればいつ出社または退社しても良い時間帯(フレキシブルタイム)とに分けているものが多いです。
自らが働き方を決めることから残業代が出ないと思っている方も多いようですが、フレックスタイム制を採用している場合でも残業代は発生します。
労働者の裁量で働くことができるのがフレックスタイム制ですので、法定労働時間にこだわらず1日8時間、週40時間を超えて働くことができるのは確かです。
ただしフレックスタイム制は「清算期間」というものがあります。清算期間は1か月以内の期間で総労働時間は1週間の平均が40時間を超えない範囲で設定しなければなりません。例えば「総所定労働時間は160時間」といった内容で労使協定で定められています。
みなし残業制(固定残業制)
基本給に残業代が最初から含まれている制度。
この制度も残業代が付かないと思っている方がいますが、残業代は付きます。
仮に1ヶ月30時間の残業代が予め、基本給に含まれている場合であれば。。
1ヶ月の残業時間が30時間を超過した分は残業代として支給されます。
また法定休日の休日出勤、深夜残業に該当する部分は支給が必要となります。
また「みなし残業制」とよく似た言葉で「みなし労働時間制」がありますが、全く違う違う制度ですので、注意が必要です。
最後に
色々な制度があり混乱しがちですが、最初に確認しておかないと
後々、会社⇔労働者で揉めることになるため注意が必要です。
また、制度を適用するに当たって労使協定で定める必要があるものや届出が必要なものもあるため、給与計算を行っている場合は、事前にきちんと確認するようにしましょう。